2024/12/24(日) [身の回りの小さなサンタ] (ぱぱ)

  3歳さんのN子ちゃんは、「勝つ」ことが大好きです。なので、私は、N子ちゃんとジャンケンをするときは、ある工夫をして、いつもN子ちゃんが勝つようにしていました。

 その方法とは、ジャンケンの一連の動作、すなわち、「最初はグー、ジャンケン、ポイ!」の、真ん中の「ジャンケン」のところで、「次に出す手を、予め、相手に示してやる」というものでした。「ジャンケン」のところで、グーかチョキかパーかを、「私の手の形で、N子ちゃんに伝えてしまう」ということです。N子ちゃんは、いつも私の手の動きに着目して、全戦全勝です。そのたびに、私は「まけた~。」と悔しがり、N子ちゃんはニンマリしていました。

 そんなやり取りが、2023年の5月頃から、12月7日まで続きました。実は、N子ちゃんは、毎朝のお父さまとのお別れが辛いようで、その辛さの代わりとして、入園間もない頃から、毎朝、私に抱き着き、何とか心を持ち直そうとしていたのでした。朝、母子父子分離が難しいというのは、良く育っている証拠です。そのことを知っている私は、困っている、お父さまに、時々、「お父さん、お子さんに愛されていますねえ。羨ましいです。」と言っていました。

 しかし、12月8日のことでした。朝、登園するなり、N子ちゃんは、私のところにやってきて、「ぱぱさん、ジャンケンしよう。」と言うのです。すぐに、「いいよ。」と返す、私。すると、N子ちゃんは、「ぱぱさん、グー出してね。」と言うのです。私は、例の特別なやり方はしないで、言われるままに、「最初はグー、ジャンケン、ポイ!」のタイミングで、素直にグーを出しました。

 すると、N子ちゃんは、何とチョキを出してきたのです。びっくりする私をよそに、N子ちゃんは、「ぱぱさん、勝ってよかったね。」と言って微笑みました。

 私は、今まで、N子ちゃんに対して、サンタさんになっていました。父子分離で悲しい思いをしているN子ちゃんが、ジャンケンで勝つことによって、「せめて、少しでも、元気をプレゼントできたら」という気持ちでした。でも、今、私の目の前にいるのは、わざと負けて、私に「勝ち」をプレゼントしてくれる、とっても優しい、「N子ちゃんサンタ」なのでした。

 もしかしたら、「サンタクロースは、あっちにも、こっちにも、身近なところに、いるのかもしれない…。」と思いました。私たちは、身の回りの小さなサンタに、気づかないだけなのかもしれません。

 その日を境に、N子ちゃんは、朝、私に抱かれることはなくなりました。N子ちゃんは、お姉さんとテラスに並んで、お父さまに、にこやかに手を振って、お別れをするようになったのです。



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