2024/05/30(木) 答えを急がない力 (ぱぱさん)

 今回は、ちょっと古い記事ですが、2024年1月3日の朝日新聞から載せますね。


 作家・精神科医の帚木蓬生(ははきぎほうせい)さんは、「『素早く答えを出す』のは、ふつうの能力と考えられているが、『そこ』には落とし穴がある。見落としてしまう。浅はかな理解にとどまってしまう」と警鐘を鳴らしています。そして、記事の締めくくりとして、「相手を『敵』と決めつけて、一気に答えを出そうとしてはいけません。問題を解決できなくても、切れずに、何とかもちこたえていくことが大切です。寛容が踏みにじられた先に、戦争があります。寛容を保つことこそ、平和を支える精神だと私は思います。」と述べられています。

 ところで、先日、川口市主催の保育所等職員研修に参加しました。講師の先生のお話によると、保育園を利用する保護者の相談内容を集計した結果は、次の通りだったとのことでした。子どもを育てるということと、悩み多きことは、イコールであることがうかがい知れますね。

・子どもの発育状況に関する悩み・・・32%
・子どもとの接し方・・・・・・・・・20%
・噛みつきなどの問題行動・・・・・・17%
・偏食に関する悩み・・・・・・・・・13%
・発達障害に関する悩み・・・・・・・10%
・その他・・・・・・・・・・・・・・・8%

 相談内容の具体的な、よくある事例として、次のことがあげられていました。(これらは、あくまでも、この先生の集計結果であって、さくらそう保育園のものではないことを、予めお断りしておきます)

・蚊に刺されるなど、些細な事で怒鳴ってくる。
・子ども同士のけんかやトラブルに対して、一方的に相手が悪いと決めつける。
・給食から、我が子の嫌いなものを抜いてほしい。
・行事やイベントでのわが子の配役や順番を変えて欲しい。
・トイレトレーニングや箸の持ち方などを園でしつけて欲しい。
・子どもが気に入っているおもちゃを園にも置いてほしい。
・保育士の態度やモラルも、クレームになる場合がある。
・保育士が言い訳ばかりする。笑顔もなく冷たい。
・保育士が子どもにも保護者にも挨拶しない。

 私は、これを読んで、帚木先生の記事を思い出しました。よくある事例の保護者の方々は、素早く答えを出さなければならない中で、懸命に考え、暫定的な答を出したのですね。本当は、ゆっくり考えたいのだけれど、そういう訓練は受けてきていないのですから、保護者も、ある意味、被害者といえるでしょう。ただ、その答の中には、落とし穴があるようです。

 蚊に刺されるということは、園外保育に出かけて、室内では味わえない体験をしているのかもしれません。子ども同士のけんかやトラブルは、相手が一方的に悪いわけではないのかもしれません。嫌いなメニューがあるということは、味覚が育ってきた証ともいえ、けっして悪いことではないのかもしれません。(中略)子どもが気に入っているおもちゃは、園には無いけれど、家庭にはないおもちゃや保育用品が、園にあるかもしれません。保護者からみた保育士の態度は、気になることもあるでしょうが、人間には相性というものがあるのですよ。もしかしたら、保育士からみたら、保護者の態度が気になっているのかもしれません。歩み寄れる点を探せないものでしょうか?

「相手を『敵』と決めつけて、一気に答えを出そうとしてはいけません。問題を解決できなくても、切れずに、何とかもちこたえていくことが大切です。」という、帚木先生の言葉を胸に刻みたいと思います。

「さくらそうでも、切れないで、一気に答えを出さないで、何とかもちこたえていけたらいいなぁ」

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