2026/06/29(月) 保育の適正利用にご協力ください by ぱぱ
今回は、「保育の適正利用」という、いつもとはちょっと違った内容で、お話ししてみたいと思います。「何をいまさら?」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、時には初心に帰ってみることがあってもいいと思いますので、少しだけ、お付き合いいただければ幸いです。
「保育の適正利用」とは、自治体が定めた支給認定(保育の必要性)に基づいて、家庭での保育が困難な日や時間帯に限って、必要な範囲で保育所等を利用することを指します。
厚生労働省の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」の第34条によると、「保育所における保育時間は、一日につき八時間を原則とし、その地方における乳幼児の保護者の労働時間その他家庭の状況等を考慮して、保育所の長がこれを定める」とあります。
また、川口市のWebサイトには、よくある質問として、幼稚園と比較した保育園についてのQ&Aが掲載されています。
Q. 保育所と幼稚園の違いを教えてください。A. 幼稚園は学校教育施設ですので、教育を目的としていますが、保育所は児童福祉施設であり、保護者に代わって乳幼児を保育することを目的としています。ですから、保育所には入所の基準があります。保護者が勤務等により児童の保育ができない場合や、出産・病気療養・病人の看護等により日中保育することができない場合に限定されます。
ということは、「保育園というところは、サービスではなく福祉事業を行うところであり、開いている間、自由に預けられるところではない」ということですね。あくまでも、保育の必要量(=家庭での保育ができない時間)に対して、お子さんをお預かりする施設だということです。
しかしながら、これ以上のこと、つまり「それでは、具体的に、どう利用すればいいのか?」ということについては、残念ながら、川口市のWebサイトには載っていないのです。
そこで、ここから先は、他の自治体が発行しているリーフレット等から、具体的な例を抜粋してみたいと思います。
川口市も他の自治体も、こども家庭庁の指し示すところに沿っていますから、さほど相違はないと思われます。
なお、各自治体とも、説明やお願いの最後は、「個々の家庭により、様々な事情があると承知しています。可能な限りのご協力をお願いいたします。」というニュアンスの言葉で締めくくられています。
これは、「家庭(お子さん、保護者のみなさん)と保育園(スタッフ、関係者)が、お互いに支え合う関係を大切にしたい」という考えの表れだと思います。
原則には、例外もありますので、ご都合がありましたら、お気軽にご相談ください。
以下、各自治体での記載内容を取りまとめたものです。
1. 利用時間
・認定された必要量(標準時間、短時間)および各園の開園時間の範囲内で、実際に必要な時間(例:就労の場合は勤務時間+通勤時間等)のみが対象となります。認定された必要量は、それぞれの区分での最大時間であり、実際の保育時間は、事由ごとに必要な分のみとなります。
・事由が就労で、保護者の勤務時間に差がある場合は、出勤の遅い方がお送りいただき、退勤の早い方がお迎えにいらしてください。
・下の子の育休中における上の子の保育等は、可能な範囲で短時間の利用をお願いします。
・認定された事由以外での利用(兄弟の送迎、買い物等)は、原則として認められていません。
・在宅勤務も就労とみなされますが、通勤に要していた時間は対象になりません。
2. 利用日
・実際に必要な日(例:就労の場合は勤務日、求職の場合は面接や書類作成があった日等)のみが対象となります。
・上記以外の日(仕事が休みの日等)の利用は、原則として認められていません。
3. 例外
・仕事が休みでも、保護者の体調不良や通院等、やむを得ない事情がある場合は、利用できます。
・保護者のリフレッシュ等、事由以外での利用をご希望の場合は、各園にご相談ください。
・例外で利用する場合は、可能な範囲で短時間の利用をお願いします。
まあ、こんな感じなのですが、実は、根本的な原因として、「日本という国では、未就学児の保育時間について、制限を設けていない」というところに問題があるようなのです。欧米では、子どもの人権を尊重して、「保育時間は、1日6時間、週30時間まで」としているところが多く、就労時間の短縮による収入の低下分は、国が補てんする仕組みになっているそうです。我が国では、ここが放置状態なのですね。
世界38カ国が加盟する国際機関「経済協力開発機構(OECD)」では、世界の未就学児の保育時間についても調査しています。しかしながら、日本は、ここに具体的な保育時間を報告していないようです。
ここから先は私見ですが、日本における現状(保育時間)が、諸外国とかけ離れている(他国に比べて極端に長い)ことから、とても報告できないということなのだと思います。残念ながら、日本では、子どもの人権よりも、就労による利益を重視しているのでしょう。
この状況を、保護者のみなさんの立場から考えると、保育園を適正に利用しようとしても、現実的には「無理」ということになってしまうのですね。言い方を変えれば、保護者のみなさんは、お子さんのことを考えて、適正に利用したいのに、職場環境が、ひいては日本という社会全体が、それを許してくれない現実があるということなのだと思います。こうしてみると、保護者のみなさんこそ、被害者なのだと言えるのかもしれません。
このあたりの詳しい情報については、保育の安全研究・教育センターの掛札先生の資料(保育通信等)を参照していただければと思います。
次に、お子さんの立場から考えてみましょう。
親との結びつきは、その子にとって、最も重要で何よりも大切なことです。子どもには、「私だけに愛情を注いでくれる親という存在」が欠かせません。親とともに過ごす時間やスキンシップが、子どもの成長や情緒の安定につながるのです。もちろん、保育士も、最大限の愛情をそそいでいますが、残念なことに、親の代わりにはなれないのです。
一方、保育園では、他の子どもたちや園のスタッフという、家庭とは違った人との関わりを持ったり、より幅広い遊びを経験したりすることができます。家庭だけでは、実現することがむずかしい、多くの人との関係や、さまざまな活動を通して、社会性や自主性、他者への思いやり等が育まれていきます。
家庭での子育てと保育園での保育、そのバランスが大切で、ちょうどよければ、お子さんにとって、理想的な育ちが期待できます。そのバランスの具体的な落としどころ(数値化したもの)が、欧米では週30時間という保育時間なのでしょう。私は、これは、人類における普遍的な数字なのではないかと推測しています。
ちなみに、さくらそう保育園 元郷の2026年5月度の保育時間は、平均8時間48分でした。その中でも、43%のお子さんが、9時間を超えています。
でも、この数字は、国内だけで見れば、平均的で、ごく当たり前なのだろうと思います。
最後に、保育園のスタッフの立場から考えてみましょう。
お子さんの利用時間が長くなると、当然、スタッフの仕事量も多くなります。
その解消方法は、大きくふたつの方向性があります。ひとつは、残業や休日出勤等で、スタッフ一人ひとりの仕事量を増やすことで、もうひとつは、基準の保育士数を上回るスタッフを配置して、一人当たりの仕事量を適量に調整することです。現在、さくらそう保育園では、後者の対応をしています。
保育士は、お子さんの保育以外にも、適切な保育を行うための計画の立案や環境の整備、保護者や行政とのやり取り、資質向上のための研修等、さまざまな業務があります。それらのための時間も、きちんと確保することで、残業等の無理をすることなく、保育そのものの質も向上させることができます。
また、机上の計算ではありますが、保育の適正利用によって、配置すべきスタッフを一人減らすことができたとしたら、年間で400~500万円ほどの支出の削減となり、その分を、他のスタッフで分け合えることになります。保育業界は、他の業種や職種に比べて待遇がよくないのですが、それではいけませんよね。
そろそろ終わりにしたいと思います。ここまでお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
日々、お仕事に追われる、みなさんにとって、今回のお話は「忠言逆耳」であり、煩わしかったことと思います。
それでも、このコラムを読んだことで、趣旨をご理解いただき、無理のない範囲で保育時間を調整してくださる方がいらっしゃれば、この上ない幸せです。
保護者のみなさんにとって、保育園という存在が、仕事や生活の一助となること、お子さんにとって、園での保育が、安心して楽しめて望ましい育ちにつながるものであること、当園のスタッフにとって、やりがいのある仕事を無理なく続けられる職場であること、そのバランスを考えたい一心で、長々と書いてみました。
保育園に関わる、すべての人が、笑顔で過ごせることを祈っています。
P.S.
先日、お手紙で、保育時間の確認をさせていただきたい旨をお伝えしましたが、本コラムをお読みいただいたことで、目的の半分は達成されましたので、取りやめさせていただきたいと思います。
先のお願いは、入園時にご提出いただく書類(勤務状況及び延長希望調書)の保育時間欄に記入のないものがあったため、監査の際に役所から指導が入ったことによるものです。
本来、この内容は、保護者からの希望に対して、園が時間を定めて記入するものであることから、現在の実情に合わせて対応したいと思います。
お手数をおかけしてしまい、大変申し訳ありませんでした。


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